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福島第一原発から放出された放射性セシウム微粒子

CsMP

福島の原発から放出された放射性セシウム:対応の見直し必要

 福島第一から放出されたCs-134とCs-137の総量は,それぞれ10の16乗 Bq(ベクレル)程度と見積もられている.環境省の放射性廃棄物に関する各種委員会の大迫政浩国立環境研教授などは,これらのセシウムが主に塩化物CsClとして存在していると考えた.ところが最近,Csの9割は亜鉛・鉄の酸化物のナノ微粒子の表面に付着し,石英ガラスがそれらを糊づけし,1μm程度の微粒子(マイクロパーティクル:CsMPと略記)となっていることが明らかにされた(Furuki, G. et al., 2017, Scientific Reports, 7, 42731; Imoto, J. et al., 2017, Scientific Reports, 7, 42118).これら2論文の研究結果の要旨を共著者の宇都宮聡氏が日本地球惑星科学連合ニュースレターv.13のno.3に紹介している(下の図はその一部).
 CsClは典型的な極性分子であり,水に溶け易い.大迫氏らは,CsClが焼却炉の中のような高温(850℃)ではガスとして存在し,焼却炉からの出口付近のような低温(200℃以下)では煤塵に付着して存在すると考えていた.焼却炉のバグフィルターで99.9%除去できるとされ,8,000Bq/kg以上の指定廃棄物もそれ以下の廃棄物も,焼却処分するというのが環境省の方針であった.モンモリロナイトへの吸着処理も,CsClが水溶性だから可能なわけである.しかし,セシウムが水に溶けにくい1μmもの大きさのCsMPとして存在していると分かった今,放射性セシウム汚染廃棄物の処理方法は,根本的な再検討が迫られている.
 もう一つ重要な事は,汚染廃棄物の放射能は低いのだが,それに含まれるCsMPの放射能は著しく高く,10の11乗Bq/gほどに達するということである.そのような微粒子が吸引されて気管支や肺胞に付着すれば強い内部被曝をもたらし,癌発生の危険性が高い.


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東通原発敷地内活断層評価に関するコメント(その10)をアップ

 東通原発敷地内活断層を評価する有識者会合は,昨年12月末の第12回評価会合を最後に終了し,今年3月25日開催の第65回原子力規制委員会に最終的な評価報告書を提出した.主要断層2本を活断層と認定したが,肝心の原子力発電所建屋直下にある2本の小断層に関しては,活断層の可能性があるという意見と“岩盤の劣化膨張”による現象の可能性があるというような両論併記であった.2015/6/11付の河北新報記事によれば,これを受け,東北電力は再稼働の時期を1年ほど延期する方針を固めたらしい.
 評価会合があれよあれよという間に終了してしまったので,肝心の原子力発電所建屋直下の2本の断層に関するコメントを有識者会合に提出する機会を逸してしまった.これを正しく評価するために必要なことの一つは板曲げという基礎力学のひとつを理解しておくことで,問題となっていた「下方に延びない第四系中の裂罅・小正断層」の成因を解くことができる.東北電力はこれら2つの断層とそれに付随する変形を再現するために有限要素法数値シミュレーションを行ったが,その結果を正しく理解することが,もうひとつの必要なことである.
 私の分析では,2つの論点とも東北電力の主張とは真逆になりました.この検討結果をコメント(その10)として私のホームページhttp://aobatotoro.info/にアップしたので,興味のある方は訪れてみて下さい.

放射性指定廃棄物最終処分場の候補地選定を科学的に

 4年前,東京電力福島第一原発から放出された放射性物質が風に乗って広く拡散した.宮城県内の汚染物質は,稲わらなどの農林業系副産物4,900トン,浄水場で発生する土1,000トンなど,大半が1 kg当たり8,000~30,000ベクレルの「放射性指定廃棄物」である.平成23年8月に制定された放射性物質汚染対処特措法に基づき,県市町の協力を得て,環境省は県内に1カ所の最終処分場(約2.5ヘクタール)を新設し,焼却減容した後にしかるべき防水対策を施した地表直下の施設に密閉貯蔵する方針である.
環境省はある手順に従って宮城県内に3カ所の候補地(北から栗原市荒砥沢の深山嶽,加美町宮崎の田代岳(正しくは箕ノ輪山),大和町升沢の下原)を抽出したが, 2次汚染とそれに伴う健康被害,風評被害などを危惧する候補地自治体が受け入れに難色を示し,絞り込みは進んでいない.6月14日付け河北新報記事によれば,環境省は3候補地の詳細現地調査を近い中に行う意向であるという.
 ところで,3.11巨大地震・津波と災害・事故の教訓は,極めて稀だが起こり得る最悪の事態を想定し,前もって対策を取っておくことであった.最終処分場に関する最悪事態とは,指定廃棄物を集積→燃焼→貯蔵しておく間に放射性物質が大気中に飛散したり,河川水や地下水に漏れ出てしまうことである.このような事が起こっても最小の被害に留めるための立地条件は,少なくとも「風上ではなく風下に」,「上流ではなく下流に」を充たさなければならない.より条件を絞れば,洪水・津波による冠水から免れる標高の海岸に近接した丘陵地がベストである.ところが,環境省による候補地選定の過程には,このような初歩的なことさえ考慮されていない.
 環境省の選定法とはどのようなものであったか.以下に概観しつつ吟味する.彼らは,まず候補地を国有地または県有地内に限定した.この一つの選定基準だけで,候補地は県西部の山岳地帯に限られ,「風下・下流」の原則に反することになってしまったのである.防災の面では誠に初歩的な誤りを犯すことになったわけだが,それは用地取得の容易さに誘惑されたためであると思われる.
 次いで地滑り,斜面崩壊,土石流など自然災害に関わる該当地域を除外した.ところが不思議な事に,栗原,加美,大和の3候補地全てが地滑りの巣のような地帯の中にあるにもかかわらず,除外されていないのである.おそらく,地滑りが候補地の間近かに有っても,地滑りの真上でなければ良いと判断したのだろう.これも科学的常識に反している.3つの地域の地滑りにはそれぞれある特定のはっきりとした素因がある.地滑りから免れている所であっても素因があるので,豪雨などの誘因が整えば,将来起きる可能性が高いのである.斜面崩壊(がけ崩れ)や土石流などに関してもほぼ同様である.
 その他の選定の基準として,観光地,自然環境保護地域などが用いられているが,国有地・県有地の枠を取り外し,「風下・下流」の原則と地滑りの素因の有無を候補地選定の基準に加えただけでも,絞り込み結果は現在の候補地とは全く異なるものになる.環境省による詳細調査の項目は,文献調査だけでも分かるようなものである.今の状況で先に進めば,環境省に対する不信が深まるばかりなので,まずはきちんとした科学的方法で候補地選定をやり直さなければならない.県議会の下に専門家を含めた検討会を組織することも一案である.

不可解! 東通原発活断層評価書,生煮えのまま原子力規制委員会へ

 原子力規制委員会有識者会合による青森県東通原発(東北電力)の敷地内活断層評価作業が始まったのは,平成24年11月のことである.以来,26年12月まで12回の評価会合と4回の現地調査が行われ,評価報告書(案)が取り纏められた.最後の12回会合では,報告書はあくまで参考資料扱いに留まる旨事務方からダメ押しされた.平成27年2月にはそれがピア・レビューにかけられて正式の報告書となり,同年3月には第65回原子力規制委員会に提出された.何とも慌ただしい不可解な幕引きであった.
 私は,この2年余りの間,評価会会合を注視し続け,有識者らをアシストするために9通(70ページ余り)の純科学的コメントを送り続けた.敷地内には活断層と疑われる“第四系変状”なるものがあり,それらの数は観察地点の40%ほど達する.これは異常である.東北電力は“第四系変状”を風化・劣化に伴う岩盤の膨張で形成されたと主張した.しかし,彼らが唱える膨張のメカニズムは次々と破綻し,膨張の確かな証拠も提出できなかった.そのため,“第四系変状”が活断層ではないという東北電力の主張の根拠も崩壊した.そして,“第四系変状”が確かに活断層とそれに随伴する変形であるとみなして何ら不都合がないことも明らかにした(詳細は東通原発の活断層評価を参照のこと).
 しかし,有識者の中には物質科学や力学などの基礎知識を欠く委員も居たのに加え,それ以上に基礎知識が乏しい事務方が評価報告書の文案を作成したためか,大変不十分で締りのない報告になってしまった.最終責任は評価会合の石渡委員長にあるはずだが,これといったリーダーシップを発揮することもなく,生煮えのままの評価報告書を原子力規制委員会に提出したのである.なぜこのような経緯になったのか.誠に不可解である.またぞろ原子力ムラの動きが始まっているようだ.
 
 

規制委・島崎氏の交代 原子カムラ回帰は論外

東北大名誉教授 大槻憲四郎 (2014年6月27日付け 河北新報 持論時論) 

  原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理が主導する有識者会合は、青森県の東通を含む6つの原発敷地内活断層に関わる安全評価を行っている最中である。
 11日、島崎氏らを交代させる人事案が参院本会議で可決、承認された。原発再稼働を望む電力会社や政財界の一部には、島崎氏の判断が「厳し過ぎる」との不満がくすぶっていて、今回の人事を歓迎するムードが漂っていたという。
 私は、昨年1月18日の持論時論に「活断層評価システム 監視怠らず変質回避を」と題する一文を投稿したが、早くも危惧していた事態に立ち至ったようである.原発敷地内活断層の安全性評価に関わる要点をあらためて述べ、この人事を批判する。
    ◇  ◆  ◇
 第一に、安全性評価はエネルギー政策や地域経済などとは別次元の問題であり、透明性を確保し、科学技術的基準のみに基づいて厳正に行うべきものである。有識者会合で配布された調査資料と会議の一部始終は原子力規制委のウェブサイトに公開されており、評価は科学的におおむね正しく行われていた。厳し過ぎるとの指摘は子どもじみた不満であって、用地買収を先行させ、立地条件の吟味をなおざりにしたまま原発を建設してきたつけが回ってきただけのことである。
 第二に、「原子力ムラ」への回帰は許されない。昨年5月23日に開かれた原子力規制に関する自民党のある会合では、「3条委だから何をやってもいいわけではない」とか「まるで『糸の切れたたこ』だ」という非難が述べられたという(昨年6月1日河北新報朝刊1面)。このような非難の意を汲んだのが今回の人事であるのなら、論外である。原子力規制委は、福島第1原発事故の反省に立ち、国家行政組織法第3条に基づき、省の外局として置かれる独立性と中立性の高い行政組織としてつくられたものであり、「糸」で操られてはならないのである。
 昨年7月29日の持論時論で指摘したように、現在の活断層評価作業の問題点は ①原発事業者側の断層や地震に関する学術的レベルが相当低い ②自らに不都合な事実から目をそむけ都合の良い部分だけに固執する という二つの要素が相乗し、評価に堪えない結論がひねり出されることなのである。
 従って、第三の要点は、原発を稼働する事業者が自らの科学技術のレベルを向上させ主体的に取り組まなければ、安全性の確保はおぼつかないということである。その良いお手本はすでにある。かつて東北電力の常務だった阿部寿氏らは、869年の貞観津波に関する自らの調査結果に基づき、女川原発敷地の海抜を福島第1原発より4.8m高い14.8mに引き上げた。この英断が3・11巨大津波の際に両原発の明暗を分けた。有識者会合が事業者側に一定以上の科学レベルを要求するのは当然なのである。
    ◇  ◆  ◇
 島崎氏は地震学会会長、地震予知連絡会会長を務めた著名な地震学者であるだけでなく、長年にわたって地震学と地質学・地形学との橋渡しにも尽力し、広い学問的視野を備えた替え難い人材であった。島崎氏の代わりを務めるという東北大の石渡明教授(前日本地質学会会長)の専門は岩石学であり、断層や地震に関する論文はほとんどない。このところNHK会長、内閣法制局局長などの「お仲間人事」が続いたが、こんなことを続けてよいはずはない。
(投稿)
プロフィール

大槻憲四郎

Author:大槻憲四郎
私は数年前に大学を退職した地学の研究者ですが、その後も研究を続行している初老です。
研究が趣味みたいなもので、一種の偏執狂かなー
70年近く生きて来ましたが、常に中心からはずれた所を歩いて来たように思います。そのような変な人間の目から見ても、今の世の中はこれまでになかったほど変だと感じます。どう変なのか、どう理解し、考えをどう変えたらいいのか・・・・知恵を出し合って考えましょう。

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