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自由競争のゴールとDLA

自由競争のゴールとDLADiffusion-Limmitted Aggregation:拡散律速凝集)

 自由競争とグローバリゼーションは色々な問題を引き起こしている。競争という言葉は古くから使われてきたが、今日のように頻繁に重みを持って話されるようになったのは最近のことだ。それが市場原理主義とグローバリゼーションの跋扈と密接に結びついていることは、誰もが指摘している。ところが自由競争は十分に科学されてこなかったようだ。生物界には多種多様な競争が知られている。無生物界にも競争がある。その最も単純なものがDLA(Diffusion-Limmitted Aggregation: 拡散律速凝集)である。私は地学の研究者で、断層集団の進化の研究をやったことがあるが、これを支配するのもDLAの一種だ。

 まあ簡単に言えば、次のようなものだ。
空からエネルギーの雨粒がランダムウォークしなから降ってくる。裸の地面には木の種がばらまかれている。たまたま真っ先に雨粒を拾った種が芽を出す。だんだんたくさんの芽が出て成長する。他より早く成長した木はより広く枝を広げるので、その分たくさんの雨粒を獲得して成長する。その木陰になった小さな木は、大きな木の枝の隙間から稀に落ちてくる雨粒しか獲得できないので、成長が遅れる。こんなプロセスが繰り返されると、少数の大きな木の下には少し多数の中ぐらいの大きさの木が、さらにその下には小さな多数の木が・・・・という感じのヒエラルキー(階層性)が出来あがる(下図 T.Vicsec著「フラクタル成長現象」より)。行き着く先は一人勝ちの世界だ。木々のサイズ分布はべき乗則に従い、フラクタル集団を作る。
DLA


 いろいろな複雑なこともあろうが、市場原理主義というのも基本的にはこんなに単純なものだ。このように単純な競争原理がグローバル化したのだから、グローバルなスケールで階層化が急速に進んだ。これを推進したいのは、エネルギーの雨粒ををグローバルなスケールで独り占めできる最上位の階層の者、すなわち米国であるのも当然だ。業種で言えば世界的な金融機関である。
 競争に打ち勝つには技術革新だ、在庫管理だ・・・・ 商品の価格は低下して価格破壊、消費者の喜びもつかの間で、リストラと賃金カットなどが続く。規制緩和で非正規労働者が増加し、子供も作れないし、結婚も出来ない。企業は労働の再生産さえ放棄して競争にひた走ることになる。それだけでも足りない。ヒモ付きの政治家達は、有望企業に注ぎ込む資金を下位の階層から税金として取りたてる。必然的に国力は衰える。このありさまは、まるで自分のしっぽを食いはじめた蛇アウロボロス(下図)のようにグロテスクだ。
Ouroboros

 行き着く先が目に見えているのに、なぜグローバル市場原理主義にストップをかけないのか。人間は、ハーメルンの笛吹き男の不思議な音色に誘われて次々とウェーザー川に飛び込むネズミと同じなのだろうか。企業にとって、競争からの中途棄権は負け組への仲間入りを意味するので、止めるに止められない。これはヒモ付きの政治家も同様で、一部は正しい。しかし、それだけではなかろう。最後まで勝ち組であり続けられる集団が居る。言うまでもなく世界的金融業だ。

2013/01/25
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原発敷地内活断層に関わる安全評価の問題

原発敷地内活断層に関わる安全評価の問題

 昨年末から原子力規制委員会有識者会合という委員会を作って関電大飯原発(福井県)、日本原電敦賀原発(福井県)、東北電力東通原発(青森県)などを対象に、原発の敷地内と周辺にある活断層の安全性に関する再評価を行っている。

 この評価システムは、これまでにない良い特徴を備えている。
第1に、有識者は関連学会から推薦され、過去にこの種の評価に手を染めたことのない人達から選ばれている。
第2に、原発に対する賛否から離れ、科学の問題に徹して厳正に評価が行われている。
第3に、事業者側の主要な調査データを原子力規制委員会のウェブサイトに公開し、会議の様子もユーチューブで見ることができるようにするなど、かつてない透明性が確保されている。

 評価は進行中だが、敦賀と東通は再稼働が難しい。大飯はまだ評価が煮詰まっていない。
私も原子力規制委員会のwebsiteに公開されている全資料を分析してみた。
敦賀は原発建屋の目の前250mの所を浦底断層と言う活動性の高い活断層が走っていて、
「よりによってよくもまあこんな所に・・・」というような所に建てられている。
この浦底断層というのは、マグニチュード7.4程度の地震を起こし得る長大な活断層帯の一部であることが、最近分りつつある。

 東通原発はの事情はもう少し複雑だ。古い正断層が何本も原発敷地内を通っていて、その断層破砕帯沿いでは観察地点の40%程度でこれを覆う第四紀層(約260万年から現在までの時代の地層)に変形が認められるという。つまり、古い正断層が地質学的には最近の時代にウジウジと動いているようなのだ。もっと悪いことには、古い正断層から少し離れたところにもきれいな小逆断層が複数見つかっていて、これらが約11万年前以降に形成されたことも分っている。観察されたほとんど全ての地盤変形が現在の応力場(力のかかり具合)で作られたと考えて何の不都合も生じないので、古い正断層が活断層として再活動していると判断されるのである。
東北電力は、これらの地盤変形が風化によって生じた粘土鉱物の膨潤力で出来たと主張してきた。
私もこの説を慎重に検討してみたが、直接的なデータも無く、ロジックも間違っていて、ほとんど説得性がない。
大飯の状況はもっと複雑で、確かな評価をするには本腰を入れた追加調査と綿密な分析が必要だ。

 私も公開されている全データを分析してみたが、比較的問題点がはっきりしている敦賀と東通に関しては、有識者会合の結論とほとんど一致した。
したがって、有識者会合は概ね信頼できる評価を行っていると言える。
「少数の専門家が短期間に・・・」と懸念する声もあるが、その心配は無用だと思う。
有識者達が調査をやり直すわけではなく、事業者がすでに大量のデータを蓄積していて、主にそれを分析し、不足の部分は事業者に追加調査させ、必要な点のみ有識者達自らが観察・分析する。
したがって、短時間の中に再評価を行うことができる。
有識者達はその道のプロなので、データを見れば問題点を見つけ出すにあまり時間を要しないし、それほど難しいわけでもない。大飯のように問題点が不明瞭な場合は、時間をかけてじっくり検討すればよい。

 敦賀と東通に関しては、原発設置許可時の活断層評価が覆されるつつあるわけだが、なぜ、このようなことになったのか?
そもそも原発建設には、用地買収が先行し、その後に電力会社や地質調査会社の専門家達が調査するのが通例だ。それで原発建設に不都合な調査結果が出ても、もはや後戻りは出来ない。彼らに残されている仕事は、建設に支障のないようなこじつけのシナリオ作りにならざるを得ない。これは有能な人材の無駄遣いでもある。
原発建設を許可するときの審査にも「原子力ムラ」の弊害が働いたかもしれない。

 有識者会合の評価を聞いた立地自治体は、地域経済に対して打撃となるとして不満を表明した。火力発電所用の燃料費がかさんで貿易収支が赤字になることを懸念する人も居る。しかし、活断層評価はあくまでも科学の領域であり、経済と一緒くたに議論すれば、失敗を繰り返すことになる。
原発を輸出産業にしようとしている人々もいる。しかし、これまでのようないい加減な安全評価を繰り返せば、買い手の信頼を得られないだろう。事実にちゃんと向き合って対処することが何よりも大切である。

 この新しい評価システムは3.11と福島原発事故の落子のようなものであるが、早速これをつぶしにかかろうとする輩が出てきている。事ここに至ってもこの方々は3.11と福島原発事故から教訓を学べないでいるのだろうか。それでは被災者に顔向けできまい。

2013/01/23
プロフィール

大槻憲四郎

Author:大槻憲四郎
私は数年前に大学を退職した地学の研究者ですが、その後も研究を続行している初老です。
研究が趣味みたいなもので、一種の偏執狂かなー
70年近く生きて来ましたが、常に中心からはずれた所を歩いて来たように思います。そのような変な人間の目から見ても、今の世の中はこれまでになかったほど変だと感じます。どう変なのか、どう理解し、考えをどう変えたらいいのか・・・・知恵を出し合って考えましょう。

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