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原発扱う電気事業者 安全科学の向上不可欠



東北大名誉教授 大槻憲四郎 (河北新報持論時論 2013年7月29日)

 福島第1原発事故の教訓を踏まえた原発規制新基準が8日に施行され、再稼働に向けてこれまでに4電力会社12基の安全審査が申請された。基準が見直されたことは一歩前進だが、なお問題は山積している。ここでは、原発敷地内の活断層に関わる問題に限って論じる。
 科学に基づく厳正な活断層評価は、原子力規制委員会有識者会合が行ってきた。これまでの有識者会合でのやりとりを観察すると、電気事業者側に2つの重大な欠陥があることを指摘せざるを得ない。そのひとつは自らに不都合な事象から目を背ける傾向があること。もう一つは科学レベルが高くないこと。この2つが相乗して評価に耐え難い結論がひねり出されてくる。以下に具体的に述べよう。
    ◇  ◆  ◇
 ある現象を見たとき、考え得る一つ一つを徹底的に調べ尽くし、最も妥当な成因にたどり着こうとするのが科学の常道である。これに対し、電気事業者側は、自らに都合のよい成因だけに固執する。
 例えば,関西電力は大飯原発(福井県)敷地内の活断層を地滑りによるものと主張した。東北電力は東通原発(青森県)の活断層を粘土鉱物の吸水膨潤によると主張している。しかし、普通の活断層と同様、プレートが押し合う力で形成された可能性が極めて高い。だが、その検討はなおざりにされている。揚げ句の果てに、「活断層でないことを証明するデー夕を追加することに努める」という発言が経営責任者から飛び出す始末だ(2月18日、東北電力副社長の記者会見)。
 日本原電敦賀原発(福井県)では、原子炉建屋の目前250mを浦底断層という活動性の高い活断層が走っている。専門家なら誰でも「よりによって何でこんな所に・・・」というような立地条件だ。ところが、日本原電が浦底断層を活断層と認めたのは、運転開始から何と30年も経た2008年のことである。
    ◇  ◆  ◇
 電気事業者側の科学的レベルの低さも心配だ。関西電力が大飯原発にある活断層を地滑りによるものとした根拠は、他の地滑りの地質構造との単なる絵合わせ的な類似性に過ぎない。証明の仕方が分かっていないのである。
 敦賀原発では浦底断層と交差する多数の小規模断層破砕帯が見つかっていて、
浦屈断層で地震が発生した時、これらが一緒に動く可能性が問題になっている。
地震の動力学的理論は、浦底断層の上で発生した破壊が北から原発敷地に近づいて来る場合に小規模断層破砕帯が動きやすいことを示唆する。しかし、日本原電はそのような検討を行っていない。
 東通原発の活断層について「粘土の吸水膨張説」が正しいなら,岩盤の劣化度と膨潤性粘土鉱物含有量とが相関するはずだ。しかし、彼らの調査データを解析すれば、ほとんど相関が認められない。
 女川原発(宮城県)は3・11の巨大津波の被害から辛うじて免れた。それは869年の貞観地震による津波を考慮して敷地を海抜14.8mに設けたことによる(福島第1では海抜10m)。福島第1と同時に女川原発も津波による壊滅的打撃を被っていたなら・・・
 このことひとつとっても、安全にとって科学がいかに重要かが分かる。原発を稼働する電気事業者が主体的に安全科学の向上を目指さなければ、安全確保はおぼつかない。事業者に原発を扱う資格が認められるのは、上記の二つの欠陥を克服したときである。(投稿)
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プロフィール

大槻憲四郎

Author:大槻憲四郎
私は数年前に大学を退職した地学の研究者ですが、その後も研究を続行している初老です。
研究が趣味みたいなもので、一種の偏執狂かなー
70年近く生きて来ましたが、常に中心からはずれた所を歩いて来たように思います。そのような変な人間の目から見ても、今の世の中はこれまでになかったほど変だと感じます。どう変なのか、どう理解し、考えをどう変えたらいいのか・・・・知恵を出し合って考えましょう。

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