FC2ブログ

規制委・島崎氏の交代 原子カムラ回帰は論外

東北大名誉教授 大槻憲四郎 (2014年6月27日付け 河北新報 持論時論) 

  原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理が主導する有識者会合は、青森県の東通を含む6つの原発敷地内活断層に関わる安全評価を行っている最中である。
 11日、島崎氏らを交代させる人事案が参院本会議で可決、承認された。原発再稼働を望む電力会社や政財界の一部には、島崎氏の判断が「厳し過ぎる」との不満がくすぶっていて、今回の人事を歓迎するムードが漂っていたという。
 私は、昨年1月18日の持論時論に「活断層評価システム 監視怠らず変質回避を」と題する一文を投稿したが、早くも危惧していた事態に立ち至ったようである.原発敷地内活断層の安全性評価に関わる要点をあらためて述べ、この人事を批判する。
    ◇  ◆  ◇
 第一に、安全性評価はエネルギー政策や地域経済などとは別次元の問題であり、透明性を確保し、科学技術的基準のみに基づいて厳正に行うべきものである。有識者会合で配布された調査資料と会議の一部始終は原子力規制委のウェブサイトに公開されており、評価は科学的におおむね正しく行われていた。厳し過ぎるとの指摘は子どもじみた不満であって、用地買収を先行させ、立地条件の吟味をなおざりにしたまま原発を建設してきたつけが回ってきただけのことである。
 第二に、「原子力ムラ」への回帰は許されない。昨年5月23日に開かれた原子力規制に関する自民党のある会合では、「3条委だから何をやってもいいわけではない」とか「まるで『糸の切れたたこ』だ」という非難が述べられたという(昨年6月1日河北新報朝刊1面)。このような非難の意を汲んだのが今回の人事であるのなら、論外である。原子力規制委は、福島第1原発事故の反省に立ち、国家行政組織法第3条に基づき、省の外局として置かれる独立性と中立性の高い行政組織としてつくられたものであり、「糸」で操られてはならないのである。
 昨年7月29日の持論時論で指摘したように、現在の活断層評価作業の問題点は ①原発事業者側の断層や地震に関する学術的レベルが相当低い ②自らに不都合な事実から目をそむけ都合の良い部分だけに固執する という二つの要素が相乗し、評価に堪えない結論がひねり出されることなのである。
 従って、第三の要点は、原発を稼働する事業者が自らの科学技術のレベルを向上させ主体的に取り組まなければ、安全性の確保はおぼつかないということである。その良いお手本はすでにある。かつて東北電力の常務だった阿部寿氏らは、869年の貞観津波に関する自らの調査結果に基づき、女川原発敷地の海抜を福島第1原発より4.8m高い14.8mに引き上げた。この英断が3・11巨大津波の際に両原発の明暗を分けた。有識者会合が事業者側に一定以上の科学レベルを要求するのは当然なのである。
    ◇  ◆  ◇
 島崎氏は地震学会会長、地震予知連絡会会長を務めた著名な地震学者であるだけでなく、長年にわたって地震学と地質学・地形学との橋渡しにも尽力し、広い学問的視野を備えた替え難い人材であった。島崎氏の代わりを務めるという東北大の石渡明教授(前日本地質学会会長)の専門は岩石学であり、断層や地震に関する論文はほとんどない。このところNHK会長、内閣法制局局長などの「お仲間人事」が続いたが、こんなことを続けてよいはずはない。
(投稿)
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

大槻憲四郎

Author:大槻憲四郎
私は数年前に大学を退職した地学の研究者ですが、その後も研究を続行している初老です。
研究が趣味みたいなもので、一種の偏執狂かなー
70年近く生きて来ましたが、常に中心からはずれた所を歩いて来たように思います。そのような変な人間の目から見ても、今の世の中はこれまでになかったほど変だと感じます。どう変なのか、どう理解し、考えをどう変えたらいいのか・・・・知恵を出し合って考えましょう。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR